ある日、共同犯AとBが捕まる。2人は罪を認めると懲役5年だが、黙秘だと2年。そこで検事はまずAに司法取引を持ち掛けた。もし、お前が2人でやったと自白したらこの場で釈放してやる。黙秘しているBは懲役10年になるがな、と。
囚人Aは考える。もし相方のBが黙秘をしているなら、今、自分が自白したら釈放されるので自白した方が得だ。もし、Bが自白していたら、自分が黙秘すると懲役10年になってしまうので、その場合でも自白した方が得だ。つまり、Bが黙秘、自白どちらを選んだとしてもAは自白した方が得。Aはそう計算し自白する。Bの方も同様に考えて自白し、結局、2人とも司法取引に乗って5年の懲役で刑務所に入れられ、何か変だなあと思う。2人が黙秘していたら2年で済んだのにと。
社会科学等の分野で有名な「囚人のジレンマ」の話は、自分だけ得しようと個々が行動すると結局みんな損してしまう、という理論です。では、どうしたら良いのか。教科書的な答えは、「裏切り」より「協調」を選択しましょう、となる。でも、これでは抽象的で分かりにくい。そこで時代劇の名作で考えてみましょう。
ある日、左官の金太郎が三両の金が入った財布を拾う。中にあった書付から持ち主の大工の吉五郎に返そうとするが、こちとら江戸っ子だと受け取らない。俺だって江戸っ子だと金太郎も言い張って、金を押し付け合う。
そこで南町奉行大岡越前が双方一理あると言い、彼らの前で自分の財布から一両を出して合わせて四両にし、その上で二両ずつ彼らに分け与える。これなら自分(大岡越前)も含め三人がそれぞれ一両ずつ損したとして手打ちとなる(三方一両損)。
私はこのオチが好きです。win-winという言葉もありますが、現実社会ではなかなか難しいからです。
やっぱり大岡越前はすごいなあと思います。また再放送してくれないかな(笑)。