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蜂蜜と1億円(広報しもだ 2023.4月号より)

今年2月、ある方のお別れの会が室蘭で開かれました。

北海道の登別を皮切りに箱根、湯河原等でホテルをいくつも経営する野口観光株式会社の二代目社長野口秀夫様のお別れの会です。そのお父上にあたる野口秀次様(創業者)は下田市柿崎のご出身で、氏は晩年自叙伝を著しました。これを読みますと、元気な秀次少年が真直ぐ成長するさまがありありと眼に浮かびます。

今回は、その中のエピソードを一つご紹介します。それは、秀次さんが柿崎の尋常小学校5年生のとき(昭和4年)の話です。ある日、父親が寝込んでしまった。学校を休んで看病していると、担任の先生が家までお見舞に来た。蜂蜜を一升瓶にいっぱい入れて。その若い先生は「野口君、お父さんをしっかり看てあげるんだよ」と私を一人前に扱って話をしてくれた。それで頑張ることができた。そのときの情景は今も忘れない。そう書いてありました。

 

氏は長じて実業家になると、市へ寄付を始めます。それが「下田市奨学振興基金」です。平成21年に氏が亡くなると、ご子息の秀夫様が引継ぎ平成30年ついに総額一億円に達しました。今日までに二百人を超える中学生の高校進学と数多くの生徒のニューポート派遣に寄与されました。

昭和初期、日本中が貧しかった頃、一人の先生が生徒の家へやってきて蜂蜜と優しい言葉をかけた。そしてそれが令和の今、下田の子どもたちの教育を支えている。私はこのことに静かな感動を覚えます。人間てすごいなぁと。

お別れの会の当日は、一両しかない室蘭本線の電車は、溢れるほどの人、人だったそうです。そして、会場の入口に、参列した皆さんに見えるように下田市からの感謝状が展示されていたと山田教育長が報告してくれました。

 

人と人とのつながり、思いやりの力、色々なことを学んだ気がします。

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