言葉では聞いたことがあっても具体的にはイメージできないのではないでしょうか。
合気道の特徴のひとつに試合がないということが挙げられます。どちらが勝った、負けたということがないのです。攻撃もありません。攻撃されたらどうやってかわすかという体裁きを稽古します。その裁き方、つまり技は実に多彩で、三千ほどもあると言われています。普段の稽古はいわゆる約束稽古です。二人一組となって、相手がこう打ってくるのを、このようにかわして投げてみて、というお手本を師範がやって見せ、その後、それぞれが稽古を始めます。
では、どうしたら有段者となるのか。
実は、初段までは稽古日数です。どれだけ稽古を重ねたかという、当人の稽古時間で受験資格を得て、師範の前で所定の約束稽古を披露して、審査され、ほぼ確実に昇級昇段となります。
ただし二段からは、相手が複数になり、武器を持って自在に襲い掛かってくるのでぐっと難しくなります。
私も長年合気道を嗜んでいますが、稽古する中で意識していることがあります。それは、「自分を無にする」ことです。20年以上続けていても、私はこの境地に遠く及びません。自我のこだわりを捨てる。これが本当に難しい。しかし、これができると攻撃を紙一重でかわせ、同時に、体を裁くことで相手をコロリンと投げられる。だから一所懸命自分を捨てるべく、稽古をしています。
キツい仕事のあと、心が頑なになったり、しょげてしまったりしたとき、稽古に行って、畳の上でぽんぽん投げられたりしていると、心がほぐれてリセットできたということがしばしばあります。
攻撃技がない、勝ち負けもない、でもしなやかな心を育む合気道。
今の国際情勢を見ると、和の武道の意義や価値をなおさら強く感じる今日この頃です。