MENU

モノより思い出。(広報しもだ 2024.8月号より)

 今から10年ほど前に「下町ロケット」というテレビドラマがあった。下町の町工場で働く人々の情熱が、観る人の感動を呼んで当時大変話題となっていた。ものづくり大国日本は、実は市井(しせい)の人々がそのひたむきさで支えているのだ、ということを私たちはこのドラマを通じて感動と共に理解したのだった。

 静岡県はものづくり県として全国に知られている。自動車、バイク、ピアノ、紙などなど。出荷額日本一のものも少なくない。ただ、こうした製造業は、東海道筋に連坦しているものの、伊豆半島の南にはあまり見ることがない。

 周知のとおり、私たち下田市の主産業は観光であり、ものづくりという範疇には属さない。そこで私は、「コトづくり」(※)と呼ぶことにした。

 モノ・コト・ヒトという言葉が流布した時代があった。確か90年代だったように思う。当時のCMに「モノより思い出」というキャッチコピーがあった。とても鮮烈だった。しかもそれはクルマのCMであった。私はとても気に入って、「そうだよなぁ、やっぱり心の中に残る何かが大事なんだよなぁ。」とやたら納得していた。

 そして、今、観光地下田が目指すべきはまさに、その思い出づくりのようなコトづくりなのだ、と考えている。家族で海に来て子どもが見せた弾けるような笑顔、紫陽花の小径を恋人と歩いた時の胸のときめき、など。

 これらは工場で生産されるモノではない。袋に入れて家に持ち帰ることもできない。思い出は、言ってしまえば儚いものだ。しかし、心の中に刻まれる尊いものだと思う。

 こうした「コト」を私たちはこれからも提供し続けたい。それを糧にして、まちを持続可能にしていきたい。そして、そのために、もっともっと工夫していこうと思う。コトづくり日本一のまちを目指して。

※(「コトづくり」という言葉は既に使われていました。)

シェアする
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次