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「俯瞰」を考える(広報しもだ 2025.7月号より)

 俯瞰。高所大所から全体像を眺めることの大切さを再認識する映画を見た。話題を集めた「カメラを止めるな!」だ。

 物語は、ホラー映画の撮影シーンから始まる。廃墟でゾンビ役の俳優と彼から逃げるヒロインが撮影の合い間に雑談しているとそこに本物のゾンビが現われ、助監督やカメラマン等スタッフも続々とゾンビ化していき、彼らを斧で殺しつつ逃げるヒロインが血だらけで生き残ってエンドロール。と、ここまで約30分。これだけでも相当恐ろしいホラー映画だと思ったが、実はこの映画の面白さはその後にある。

 エンドロールが終わると、シーンが切り替わり、一ヶ月前にさかのぼって、映画づくりの現場になる。俳優、監督、メイクその他のスタッフ達が撮影の準備をし、そして撮影を始める様子などが映し出される。斧で切りつけて首が飛ぶシーンとか血潮を浴びるシーンとか。へぇ、こうやって作るんだ、と私たち素人は面白い。ホラー映画を作っているうちに次々にスタッフ達が殺されていく、という映画を作っている人たちを描いているので、つまり二重のメイキング映画なのだが、作り手達の懸命な姿は、私たち観る者の心を打つし、特にラストシーンは清々しい程感動的だ。そして、最後の、本当のエンドロールの映像で私達はまた驚かされる。

 これらのメイキングシーンに映るのも実は、役を演じる俳優がほとんどであって、彼らを支えるもっと多くの人達がいたことに気づくからだ。そうなのだ。この映画はなんと三重のメイキング映画だったのだ。

 さて、ひるがえって見ると、私たちは、多くの人々と関わりを持ちながら生活している。しかし、実はその背後にはきっとたくさんの見知らぬ人々の様々な苦労や涙があるのだ。

 映画のように画面を通して見ることはできないが、ときには俯瞰で眺めることで、色々な人やコトに思いを致すよう努めたいと思ったのでした。

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